小公女(下)
偕成社 | 1985/08/01
みんなの感想
児童文学の古典を改めて手にすることは、自分の人生経験を通してテキストが新しく輝く瞬間を与えてくれる。『小公女』下巻はまさにそれだった。 上巻で描かれた過酷な状況から、主人公セーラがどのように自分の尊厳を保ち、運命を切り開いていくのか。その過程における心理描写の繊細さに改めて感動した。バーネットは単なる逆転劇として終わらせず、困窮の中で磨かれた人間の本質、優しさと強さの関係性を丁寧に描き出している。 大人になってから読むと、セーラの想像力や思考の力が、単なるロマンチシズムではなく、実は過酷な現実を生き抜くための強靭な知性だったことが理解できる。フリーランスという不安定な立場にある自分だからこそ、彼女の内的な強さへの共感が深い。 新書版は携帯性に優れ、細かな活字も読みやすい。古典だからこそ新しい版で出会い直すことの価値を感じた一冊だ。人生の異なる段階で読み返す価値がある作品である。
フランセス・ホジソン・バーネットの名作、『小公女』の下巻を読了した。少女文学の古典として高く評価される作品だけあり、前巻で築かれた物語の基盤の上に、主人公セーラの人生がどう転機を迎えるか、その描写は確かに丁寧である。 ただし、正直なところ、現代の読者である自分にとっては、全体的に予定調和の域を出ない印象は拭えない。19世紀の作品ということを差し引いても、物語の展開やセーラの成長譚は、さほど意外性に富んでいない。むしろ児童文学としての道徳的メッセージが前面に出すぎているような感覚もある。 その一方で、困窮から救済へと至るストーリー展開の運び、そして各登場人物との関係性の深化については、職人的な仕上がりが感じられる。バーネットの筆力そのものは決して色褪せていない。 古典として歴史的価値を認めつつも、文学作品として現在読むべき必然性があるかと問われれば、微妙な答えになってしまう。一読の価値はあるが、期待値を極度に高めて向かうほどではないというのが、率直な感想である。