架空通貨 新装版
講談社 | 2026/02/13
みんなの感想
久しぶりにページをめくる手が止まらない小説に出会いました。経済という複雑なテーマを扱っていながら、決してとっつきにくくなく、むしろ一気読みさせる力強さがあります。 教え子の父の会社破綻から始まるこの物語。表面的には金融トラブルなんですが、掘り下げていくと見えてくるのは「カネ」を巡る人間の欲望と権力の構図。エンジニアとして複雑なシステムに向き合う仕事をしていると、経済の仕組みってやっぱり人間ドラマなんだと改めて感じさせられます。 何が素晴らしいかというと、登場人物たちがみんな必死で、その必死さが伝わってくるんですよ。教師・辛島の動きを追いながら、徐々に明かされていく「闇のカネ」の真実。ページをめくるたびに緊迫感が高まります。 江戸川乱歩賞受賞作だけあって、構成もしっかりしてますし、読み終わった後にきちんと余韻が残る。気軽に読む小説としてこれ以上ないくらい満足できました。新装版で手に取ったことに感謝です。
期待して手に取った作品だったんですが、正直ちょっと物足りなさが残りました。 江戸川乱歩賞の受賞第1作ということで、経済サスペンスとしての仕掛けに興味を持ったんです。教師が生徒を救うために企業王国のドンに迫っていく...という設定は面白いですし、裏側のカネの流れを描く視点も好きです。ただ、実際に読んでみると、その経済的な部分の描写がやや曖昧というか、テクニカルな説得力に欠けるような気がしました。 エンジニアとして複雑なシステムを扱うことが多いので、小説でも内部の論理性や構造がきちんと組み立てられていると没入感が深まるんですよね。この作品は雰囲気重視で、詳細な仕組みについては読者に任せている感じ。それが意図的な手法かもしれませんが、個人的にはもう少し緻密に描かれていてほしかった。 キャラクターも魅力的とは言いがたく、ストーリーの盛り上がりにも欠ける印象です。新装版というので改編されているのかもしれませんが、今のエンタメ作品と比べると洗練さが足りないように感じました。 気軽に読むには重めすぎ、本格的なら物足りない——そんな中途半端な印象が残りました。