苦役列車

苦役列車

西村 賢太

出版社:新潮社 出版年月日:2012/04/01

新潮社 | 2012/04/01

4.00
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

話題になっていたので手に取ってみたのですが、こんなに重い作品だとは思いませんでした。19歳の貫多が冷凍倉庫での日雇い仕事の中で感じる劣等感と怒り——その澱のような感情が、本当にリアルに伝わってきます。 公務員という安定した職にいる自分からすると、希望も見通しもなく生きる主人公の姿勢は、ある種の覚悟のようにも見えて、羨ましくもあり怖くもあり。私小説的な手法で描かれているからでしょうか、読んでいて居心地の悪さを感じずにはいられません。その不快感こそが、この作品の力なんだと思います。 併録の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、後年の貫多の人生が描かれていて、序編から続編へと読み進めることで、より深い味わいが得られました。文学的価値があるのはもちろんですが、現代を生きる若者のもやもやした心情を言語化する力に、芥川賞の意味を改めて感じた一冊です。

感想

芥川賞受賞作ということで、正直なところ敬遠していた時期もあったのですが、レビューを読み込んでから手に取ることにしました。正解でした。 19歳の貫多が埠頭の冷凍倉庫で日々を過ごす描写は、一見地味ながら、読み進めるうちに自分の若き日の迷いや焦燥感が蘇ってくるようです。現代文学の中で私小説が復権したという触れ込みも納得できます。著者が描く「やり場のない怒り」という感情の質感が、言葉を通じてまっすぐ伝わってくる。これは技巧ではなく、本物の実感からしか生まれません。 フリーランスとして生きる立場からすると、主人公の無名性や社会的な不確定性に対する向き合い方が、他人事ではありませんでした。中年になって読むからこそ、失われた希望と現在の諦観の違いが見えてくる。そのあたりが深い。 併録の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」も、後年の視点からの再考察として秀逸です。読み終えて、自分自身との距離が少し変わったような気がします。慎重に選んだ甲斐がありました。