雫の街

雫の街

乃南 アサ

出版社:新潮社 出版年月日:2026/01/28

新潮社 | 2026/01/28

4.50
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

家庭裁判所を舞台にした連続短編形式の構成が、実に気持ちよく読めました。調査官・庵原かのんが向き合う一つ一つの案件が、単なるミステリーにとどまらず、人間関係の複雑さや心理の深さを丁寧に描き出しています。 教員という仕事柄、生徒や保護者の隠れた事情や本当の気持ちを知る機会が多いのですが、この小説を読んでいると改めて「人の心の内は本当に見えないものだ」と感じさせられます。表面に見える問題の背後にある、切実で切ない理由たちが次々と明かされていく過程は、とても人間らしくて好きです。 庵原という主人公のキャラクターも素晴らしい。プロフェッショナルながら、相談者たちの気持ちに寄り添う姿勢が自然で、読んでいて信頼感が持てます。短編集ながら、各編がしっかり着地しているので、どの話から読んでもぐいぐい引き込まれます。前作同様、後味のいい話と考えさせられる話のバランスも絶妙。週末に少しずつ読み進める、そんな楽しみ方ができる一冊です。

感想

「雫の街」を読み終わりました。家庭裁判所の調査官が扱う事件を通じて、人間関係の複雑さを丁寧に描いた作品ですね。 シリーズ第二弾ということで、最初は躊躇しましたが、思い切って読んでみて正解でした。庵原かのんというキャラクターが実に魅力的で、調査官としての冷徹さと人間らしい温かみのバランスが素晴らしい。記憶喪失の事件や行方不明者の話など、一見バラバラに見える案件が物語の中で少しずつつながっていく構成も巧みです。 人生経験が豊かな年代だからこそ、登場人物たちの嘘や秘密、その背後にある事情が他人事とは思えません。終わり方も含めて、後味が悪くなく、むしろ人間への理解が深まるような仕上がりになっていました。文庫本というのも気軽に持ち歩けて良いですね。 慎重に本を選ぶ方には是非お勧めしたい一冊です。