未必のマクベス

未必のマクベス

早瀬 耕

出版社:早川書房 出版年月日:2017/09/21

早川書房 | 2017/09/21

3.50
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

話題のビジネス小説ということで、手に取ってみました。香港出向という国際的な舞台設定や、IT企業を舞台にしたストーリーは現代的で、つい引き込まれます。 主人公・中井優一が直面する陥穽という言葉が示唆する通り、物語は複雑に絡み合った利害関係や人間関係の中での葛藤を描いています。ビジネス的な駆け引きや経営判断についての描写も緻密で、そういった側面は大変興味深く読めました。 ただ、全体的には登場人物たちの心理描写や動機が、若干わかりにくく感じた部分があります。なぜそのような決断に至ったのか、もう少し掘り下げてほしかったというか。また、物語全体を通して、読み手として何を感じればよいのか、メッセージ性がやや曖昧に映りました。 いい作品には違いないのですが、特に心を揺さぶられたり、強く記憶に残ったりという印象はなく。もう一歩の深みがあれば、評価はぐんと上がったのではないかと思います。ビジネス小説好きな方には向いている一冊ですね。

感想

IT企業を舞台にした経営サスペンス小説として、非常に興味深い作品です。エンジニア出身の身としては、香港出向という設定に即座に引き込まれました。 主人公・中井優一の置かれた状況は、技術職から経営職への転換という私たちの業界でも起こりうる現実的なシナリオ。その中で次々と降りかかる陥穽がどのように構成されているのか、ページをめくる手が止まりませんでした。作者は企業内での権力関係や利害対立を実に丁寧に描き出しており、表面的なビジネス小説では終わらない深さがあります。 ただ、後半の展開については、若干の強引さを感じる部分もありました。登場人物の動機付けがやや唐突に思える箇所があり、そこでやや引っかかってしまったのが正直なところです。 それでも総じて、現代のコーポレートドラマとして十分な完成度を備えた作品だと感じます。経営層の視点から企業組織を見つめ直すという点でも、エンジニアとして読む価値は大いにあります。慎重に選ぶ私が最後まで満足して読み終えられた点が、この作品の質を物語っていると思います。