時をかけるゆとり
文藝春秋 | 2014/12/04
みんなの感想
直木賞作家による初エッセイ集ということで、期待と若干の不安を抱きながら手に取った。若い作家の試みだからこそ、失敗する可能性もあるだろうと慎重に考えていたのだが、これは想像以上に良かった。 「ゆとり世代」である著者が、自らの世代を対象に、就活や社会人生活の傍らにある何気ない日常を観察する視点は、私たちの世代とは異なる角度から人間というものを見つめている。その観察の鋭さと、それをユーモアを交えて表現する力に、何度も微笑まされた。 特に感心したのは、無駄に見えることの中に価値を見出そうとする姿勢である。キャリアや効率ばかりが重視される現代にあって、「圧倒的に無意味な読書体験」というフレーズに込められた著者のメッセージは、年を重ねた読者にも深く響くものがある。 ただし、全編がエッセイ的軽さで統一されているため、深い思想的示唆を求める向きには物足りなく感じるかもしれない。しかし人生経験の異なる世代を理解したいなら、これは有意義な一冊だ。丁寧に書かれた良質なエッセイ集として、安心して勧められる。
エンジニアという職業柄、ついつい効率性を求めてしまう自分には、このエッセイ集が意外なほど刺さりました。 著者の『何者』を読んでいたので、その観察眼の鋭さは知っていたつもりでしたが、このエッセイ集ではそれがより直接的に、時に自虐的に、時にユーモアを交えて表現されています。上京、バイト、就活といった「ゆとり世代」特有の経験を綴った23編は、いずれも「なぜこんなことが面白いのか」と思わせる不思議な魅力があります。 私たちの世代とはほぼ同じ年代の著者が、当事者目線でゆとり世代を分析する視点が興味深い。現代社会への違和感や、社会人になってからの戸惑いといった普遍的なテーマを、軽妙な筆致で綴っているため、読んでいて自分自身の経験と重ねながら思わず頷くことが多々ありました。 「圧倒的に無意味な読書体験」というキャッチコピーの通り、そこに技術的な学びや実用性を求めると肩透かしを食うでしょう。しかし、たまにはそうした「無意味さ」に身を委ねることの大切さを思い出させてくれる一冊です。リラックスしたい時や、思考をリセットしたい時に最適だと感じました。