ババヤガの夜

ババヤガの夜

王谷 晶

出版社:河出書房新社 出版年月日:2023/05/09

河出書房新社 | 2023/05/09

4.50
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

帯の惹句に惹かれて、思わず手に取ってしまいました。女性の暴力団員という設定だけで、これはもう読むしかないでしょう。 依子というキャラクターが本当に魅力的です。暴力を唯一の趣味とする、一見するとぶっ飛んだ女性なのに、読み進めるにつれて彼女の内面の複雑さ、痛みのようなものが静かに立ち上がってくる。その対比がたまりません。運転手兼護衛として関わることになるお嬢さんとの関係性も、予想外の展開で目が離せませんでした。 描写が本当に容赦ないというか、血が逆流するというキャッチコピーそのままに、アクションシーンはこれでもかと生々しい。でも不思議と嫌悪感ではなく、むしろ引き込まれてしまう。この著者の筆力の素晴らしさです。秘密と秘密が折り重なるストーリー構成も見事で、終盤の大胆な仕掛けには本当に驚かされました。 気軽に読む本というより、がっつり世界観に浸れる一冊。こういう個性的で力強い物語、もっと読みたくなります。

感想

暴力団の娘の運転手という異色の設定に、正直なところ最初は躊躇していました。でも、丁寧なレビューが多かったので読んでみることにして正解でした。 新道依子というキャラクターの描き方が秀逸です。暴力を唯一の趣味とする女性という一見単純な設定ながら、話が進むにつれて彼女の複雑な心理が層状に明かされていく。39歳の私たちも仕事の中で様々な秘密や背景を抱えていますが、この物語はそうした「人間の多面性」をダークに、でも誠実に描いています。 文体の迫力がすごい。「血が逆流するような描写」という謳い文句は本当で、アクションシーンは思わず息をのむほど。ただ暴力的なだけではなく、その先にある感情や葛藤が丁寧に描かれているところが、単なるアクション小説を超えた作品に仕上がっています。 会長の一人娘との関係性も興味深く、二人の絆が物語の核となって、最後まで引き込まれました。普段のエッセイ読みからは一歩踏み出す冒険でしたが、この作品の奥行きはその冒険を十分に報いてくれました。