さようなら、オレンジ

さようなら、オレンジ

岩城けい

出版社:筑摩書房 出版年月日:2013/08/01

筑摩書房 | 2013/08/01

4.33
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

太宰治賞を受賞した話題作ということで、手に取ってみました。オーストラリアの田舎町を舞台に、異なる境遇の二人の女性が出会い、関係を深めていく物語です。 サリマはアフリカからの難民、ハリネズミは自分の夢を後回しにして渡豪した日本人女性。一見すると全く異なる人生を歩んできた彼女たちが、職業訓練学校で英語学習を通じて繋がっていく過程が丹念に描かれています。 何しろこの年になると、人生の選択肢の重さというものが身に染みてわかります。夫について異国へ渡った女性、子どもを育てるため懸命に働く難民女性——それぞれが人知れず抱えているものの大きさに、じっと考えさせられました。 著者の視線は温かく、決して説教的ではありません。むしろ二人の小さな日常の会話や思考の中に、人間らしさが息づいているのが良い。話題作とはいえ、きちんと文学として完成した一冊だと思います。定年後、人生の後半戦に入った世代の方にも強くお勧めしたい作品です。

感想

太宰治賞受賞作ということで慎重に手に取ったのですが、正解でした。 オーストラリアの田舎町を舞台に、難民女性サリマと日本人女性ハリネズミの関係を描いた作品。一見するとテーマが重そうでしたが、意外なほど温かみがあり、読み進めるのが止められませんでした。 フリーランスという立場で、常に先の見えない生活をしている自分だからこそ、二人の主人公たちが必死に前に進もうとする姿勢に強く惹かれました。言語の壁、文化の違い、人生の諦め——こうした困難に直面しながらも、他者とのつながりの中で少しずつ変わっていく過程が丁寧に描かれています。 特に印象的だったのは、タイトルの「さようなら、オレンジ」に込められた意味。その解釈は読み手に委ねられるところが、文学作品らしい奥深さだと感じました。 難民問題や国際的な視点も盛り込まれていながら、押し付けがましくなく、あくまで人間関係の物語として昇華させている著者の手腕が見事です。47歳という人生経験を積んだ時点だからこそ味わえる深さがある作品だと思います。迷っている方には、ぜひお勧めします。